家族の加入について
健康保険では、被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行います。この家族のことを「被扶養者」といいます。被扶養者として認定されるためには、「国内居住」のうえ、「家族の範囲」と「収入」について一定の条件を満たしている必要があります。
- POINT
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- 被扶養者となるためには、健康保険組合の認定を受けなければなりません。
- 被扶養者の異動があった場合は、5日以内に届出をしてください。
家族の範囲
被扶養者となれる家族の範囲は、三親等内の親族と決められています。さらに、同居・別居により、条件が異なります。
被扶養者は下記の(1)~(4)のいずれかに該当した人に限られています。
- (1) 被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)・子・孫・兄弟姉妹で主として被保険者の収入で生活を維持している人。
- (2) 被保険者の三親等内の親族で、被保険者と同一世帯で主として被保険者の収入により生計維持されている人。
- (3) 被保険者と内縁関係にある配偶者の父母および子で、被保険者と同一世帯で主として被保険者の収入により生計維持されている人。
- (4) 前記(3)の配偶者が死亡した後、その父母・子で引き続いてその被保険者と同一世帯で、主として被保険者の収入により生計を維持されている人。
直系尊属とは?
血すじのつながりが被保険者よりも上位にあたる人でいわゆる目上の関係に位置している人。
(父母・祖父母・曾祖父母など)
内縁関係とは?
届出を提出さえすれば、法律上の妻または夫になることができる人。
同一世帯とは?
たんなる親族と「同居」しているということではありません。
民法とは異なり、健康保険法による『同一世帯』とは、被保険者と住居および家計を共同にすることを意味します。
同居していたとしても、二世帯住宅など家族が居住する部屋が明確に分けられていたり、家計も別々で家族が別個の生活を営んでいる場合などは『同一世帯』とはなりません。
収入の基準
扶養の程度の基準としては、被扶養者となる人の年間収入が130万円(60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者は180万円)未満で、被保険者の収入の2分の1未満であることとされています。
ただし、75歳以上の高齢者は後期高齢者医療制度の被保険者となりますので、健康保険の被扶養者にはなれません。
年齢 | 同居/別居 | 被扶養者となる人の 年間収入額の条件 |
収入月額 (日額) |
---|---|---|---|
60歳未満 | 同居 | 「130万円未満」かつ「被保険者の年間収入の2分の1未満」 | 108,334円 (3,612円) 未満 |
別居 | 「130万円未満」かつ「被保険者からの仕送り額よりも少ない額であること」 | ||
60歳以上または 障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者 |
同居 | 「180万円未満」かつ「被保険者の年間収入の2分の1未満」 | 150,000円 (5,000円) 未満 |
別居 | 「180万円未満」かつ「被保険者からの仕送り額よりも少ない額であること」 |
- ※収入限度未満であることは認定の基準の一つではありますが、最も重要なのは「主として」被保険者によりその家族の生計が維持されているかという事実が必要です。
主として被保険者の収入により生計維持とは?
主として(おもに、もっぱら)その生計費を被保険者が負担している。
簡単に言うと、暮らしの費用(被扶養者が生きていくために必要な費用 ※食料費、住居費、光熱費、被服費、医療費、交通費、通信費、教育費等)の半分以上を被保険者が援助していることです。
【援助額の考え方】
■援助額の計算式…標準報酬月額÷(本人+被扶養者数+申請家族数)=1人あたりの援助額となります。
例1) 標準報酬月額30万円 本人+被扶養者数+申請家族数=4人の場合
◆ 300,000円÷4人=75,000円(1人あたりの援助額)
申請家族の収入 | 援助額 | |||
70,000円 | < | 75,000円 | → | 申請可能です |
例2) 標準報酬月額20万円 本人+被扶養者数+申請家族数=4人の場合
◆ 200,000円÷4人=50,000円(1人あたりの援助額)
申請家族の収入 | 援助額 | |||
60,000円 | > | 50,000円 | → | 申請不可です |
- ※ただし、特別な事情(障害年金受給等)がある場合はご相談ください。
なお、被扶養者の対象となる人に収入がある場合は、被保険者によって生計を維持されているかどうかが問題となります。そこで収入がある方については、主として被保険者により生計を維持されていることを前提として、おおむね次の基準で判断されることになります。
- (1) 認定対象者が同居(同一世帯)している場合
認定対象者の年収が130万円未満で、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であること。(原則として) - (2) 認定対象者が別居している場合
認定対象者の年収が130万円未満で、かつ、その額が被保険者の仕送り額より少ないこと。 - (3) 認定対象者が60歳以上または障害者(障害厚生年金をもらえる程度の人)の場合
前記(1)・(2)の認定基準のうち「130万円未満」が「180万円未満」であること。
収入とは
所得税の課税対象となっていない交通費等の現金収入、現物収入も含めてすべての収入のことをいいます。 具体的には、勤労による収入(パート、アルバイト、内職、家庭教師、技芸教授謝礼等を含む)・各種年金収入(厚生年金、国民年金、各種共済年金、船員保険年金、農業年金、石炭鉱業年金、企業年金等)・事業収入(農業、漁業、林業等)・恩給収入(文官恩給、旧軍人恩給、旧軍人遺族恩給)・雇用保険の失業給付・休業補償費(傷病手当金、労災補償等)・不動産収入・利子、配当金による収入・親族などからの仕送り等をいいます。
年間収入の考え方(認定対象者が60歳未満の場合)
税法上とは異なり、収入を得た日から先の1年の収入を年間収入といいます。(すなわち、認定を受けようとする直近の収入をもって年間収入を判断する)
例1
平成16年8月1日に就職した場合の年間収入の見方は以下のようになります。
例2
平成16年5月1日に就職した場合の年間収入の見方は以下のようになります。
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 |
---|---|---|---|---|---|
11万円 | 12万円 | 11万円 | 未定 | 未定 | 未定 |
(11万+12万+11万)÷3ヵ月×12ヵ月= | 136万円 |
(5~7月) | (年間収入) |
そうすると、年間収入130万円を超えてしまうため、扶養に入れません。会社を辞めた時点で扶養申請をしてください。
自営業者の収入について
自営業者(個人事業主)の方においては、経済的に自立した存在であり、生活するために自分で事業を経営することを選択した方となりますので、ご自身で国民健康保険に加入するのが基本です。
従って、自営業者であるのに被保険者の支援がなければ生活ができないという場合は、事業内容や収入状況を十分に確認する必要があります。
なお事業の経営状態悪化など、収入減少が一時的である場合は被扶養者として認められません。
また、法人の代表者については強制被保険者となるため被扶養者として認められません。
自営業者の収入については、【年間総収入から「※直接的必要経費」を差し引いた額】となります。
直接的必要経費の申告を希望する場合は、直接的必要経費申告書の提出が必要です。
詳細は以下をご確認ください。
夫婦が共働きの場合(夫婦共同扶養)
夫婦がともに健康保険の被保険者である場合で、子や親などを扶養する場合(夫婦共同扶養)は、原則として「年間収入の多い方」の被扶養者とすることとされています。
ここでいう年間収入とは「今後1年間の収入見込み」のことを言い、これは厚生労働省通知(令和3年4月30日付保保発0430第2号「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」)により以下の通り明示されています。
【夫婦とも被用者保険の被保険者の場合】
過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの
- ※夫婦の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、届出により主たる生計維持者の被扶養者とします。
- ※夫婦の一方が共済組合の組合員で、扶養手当等の支給がある場合には、その支給を受けている方の被扶養者とすることができます。
【夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合】
国民健康保険の被保険者:直近の年間所得で見込んだ年間収入
被用者保険の被保険者:過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの
夫婦の収入の多い方が逆転した場合
夫婦の「年間収入の多い方」が逆転した場合は、年間収入が多くなった親の加入する健康保険組合で扶養認定されることを確認したうえで、速やかに扶養を入れ替える手続きを行ってください。
育児休業期間中の取り扱い
子を扶養に入れている被保険者が育児休業等を取得した場合、当該休業期間中に主たる生計維持者の変更があった場合でも、特例的に被扶養者を異動しないこととします。(被扶養者の地位安定の観点より)
ただし、育児休業等が終了した時点で主たる生計維持者の変更が生じている場合には、育児休業が終了した日の翌日を事実発生日として扶養異動手続きが必要です。
また、育児休業期間中に新たに誕生した子については、改めて扶養認定手続きを行います。
(参考)
- 厚生労働省通知(令和3年4月30日付保保発0430第2号「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」)
- 厚生労働省通知(令和3年8月11日付事務連絡「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に係るQ&Aについて」)
共同扶養者(優先扶養義務者)について
同一世帯に共同扶養者(優先扶養義務者)がいる場合は、その方と被保険者の収入を比較し多い方の被扶養者とする、とされています。
被保険者と被扶養者の続柄 | 共同扶養者(優先扶養義務者) |
---|---|
子 | 被保険者の配偶者 |
父・母 | 被保険者の配偶者・父母・兄弟姉妹 |
兄弟姉妹 | 被保険者の配偶者・父母・その他兄弟姉妹 |
祖父母 | 被保険者の配偶者・祖父母・父母・兄弟姉妹 |
義父母・義兄弟姉妹 | 被保険者の配偶者・義父母・配偶者の兄弟姉妹 |
孫 | 孫の父母・被保険者の配偶者 |
「年収の壁」に対する政府の施策について(2023年10月より)
- 参考リンク
「年収の壁」とは
「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことです。
健康保険等の被扶養者がパートタイマー等で働き、年収が一定以上になると、被扶養者ではいられなくなり、健康保険や国民健康保険等の被保険者となりますが、そうなると社会保険料の負担が発生して、結果として手取り収入が減少する場合があります。
社会保険における「年収の壁」は、企業規模の違い等により、年収106万円と年収130万円の2つがあります。
(出典:「年収の壁」への当面の対応策(厚生労働省))
年収106万円の壁 | 従業員51人以上の企業、賃金月額88,000円以上(年収:約106万円以上)等、一定の条件を満たす場合は、社会保険料が発生。 |
---|---|
年収130万円(※)の壁 | 被扶養者の認定基準を満たさなくなるため、条件を問わず、社会保険料が発生。 |
- ※60歳以上または障害者は180万円
年収130万円の壁に対する対応
被扶養者認定は前年の課税証明書等の確認で行われていますが、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となる場合は、事業主の証明を添付することにより、収入見込額が130万円以上であっても、引き続き被扶養者の認定を受けることができるようになります。
(同一の者について原則として連続2回までを上限とします)
年収106万円の壁に対する対応
社会保険適用促進手当(※)の支給等、労働者の収入を増加させる支援を行った企業に対して一定期間助成が行われます。
※社会保険適用促進手当
短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合、当該労働者の保険料負担を軽減するために支給することができる手当です。
社会保険適用促進手当は、給与・賞与とは別に支給するものとし、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象に考慮しないこととされます。
- ※対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の方。
- ※報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額。
- ※最大2年間の措置。
被扶養者認定における国内居住要件の追加について
2020年4月より、健康保険の被扶養者認定の要件に、国内居住要件が追加されました。日本国内に住所を有していない場合、2020年4月1日以降は、原則として被扶養者の認定はされません。(海外留学等、一定の例外あり)
国内居住要件の考え方について
住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすものとされます。
- ※住民票が日本国内にあっても、海外で就労している等、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、国内居住要件を満たさないと判断されます。
国内居住要件の例外
外国に一時的に留学している学生等、海外居住であっても日本国内に生活の基礎があると認められる場合は、例外として国内居住要件を満たすこととされます。
【国内居住要件の例外となる場合】
- ① 外国において留学をする学生
- ② 外国に赴任する被保険者に同行する者
- ③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
- ④ 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
- ⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
国内居住者であっても、被扶養者と認められない場合
医療滞在ビザで来日した方、観光・保養を目的としたロングステイビザで来日した方については、国内居住であっても被扶養者として認定されません。
経過措置について
国内居住要件の追加により被扶養者資格を喪失する方が、施行日(2020年4月1日)時点で国内の医療機関に入院している場合、経過措置として、入院期間中は資格が継続されます。
被扶養者の異動(変更)があったら
結婚や出産などにより被扶養者が増えたときや、就職や別居、死亡などで、それまで被扶養者に認定されていた家族が被扶養者の認定基準を満たさなくなった場合は手続きが必要です。
手続きは被保険者がお勤めの会社を経由して提出してください。(任意継続被保険者の方は直接組合に提出してください。)
被扶養者の資格確認について
当組合では、毎年、健康保険法施行規則に基づき、被扶養者として認定された方がその後も引き続き扶養基準を満たしているかの確認調査(検認)を実施しています。
調査時には扶養追加時と同様、当該被扶養者の収入確認書類などの各種書類が必要となりますので、それらの書類は一定期間お手元に保管いただくようお願いいたします。
この資格確認によって、扶養要件を満たしていないと当組合が判断したときは、その要件を満たさなくなった日まで遡って資格を取り消し、その間に医療機関等で受診している場合は、健康保険組合が支払った医療費等について返還していただきます。